セイカのタイワ
〜精華演劇祭スペシャル選考会より〜

<選考委員>
太田耕人(演劇評論家)
金田明子(演劇ライター、精華演劇祭企画委員)
小堀 純(編集者、精華演劇祭企画委員・代表)
野杁育郎(いちびり庵、精華校園跡地活性化協議会・事務局長)
深津篤史(桃園会、NPO法人大阪現代舞台芸術協会・理事長)
福本年雄(ウイングフィールド代表)
桝井政則(朝日新聞大阪演劇担当)
<進 行>
丸井重樹(精華小劇場・事務局)

#01 精華小劇場の現在
#02 大阪にある劇場
#03 拠点劇場の集客力
#04 精華の対話

#02 大阪にある劇場

「精華演劇祭スペシャル」の選出枠は1団体だが、選考会では多くの劇団名があがった。演劇祭vol.1登場の劇団Ugly ducklingは太田氏と野杁氏が推薦。演劇祭vol.2からは蟷螂襲率いるPM/飛ぶ教室を太田氏、小堀氏が推す。そして、「確実に一定レベルの作品を創り続けている劇団」として桝井氏が推す劇団@太陽族は、野杁氏、福本氏も手を上げる。また、「参加作『記憶の森』はエンターテイメント性があって、今までにない新しい面を見た」と評して福本氏は劇団態変も推薦し、これには「久しぶりに笑った舞台だった」と小堀氏が共感していた。

京都舞台芸術協会が企画した演劇祭vol.3からは、劇団八時半、ニットキャップシアターが推薦される。劇団八時半『完璧な冬の日』は「逆境と闘い続ける主人公に自分自身を重ねるところが合って、惹かれる作品」と福本氏があげ、桝井氏も候補に。そして、3部作の"どん亀シリーズ"で観客を爆笑の渦に巻き込んだニットキャップシアターは野杁氏が推薦する。また、オープニングに登場した奇才・天野天街率いる名古屋の少年王者舘を推薦したいという声が、深津氏、小堀氏、野杁氏よりあった。


現状の突破口を

選考には現在の演劇事情がつきまとった。「関西の演劇は危機的な状況。かといって作品の質が下がっているわけではなく、関西は常に一定水準の演劇が創られている。丸井氏は"風穴"と言ったが、より多くの人に高いレベルの作品が知られるよう"突破口"を開きたい」と、おもに観客減少の問題を指摘した太田氏。続けて「創作者が作りたいものは曲げられない。一方で観客は観客の観たい作品がある。精華小劇場がこの両者を繋ぐことができれば素晴らしい」と、演劇祭スペシャルの可能性を示唆する。また、太田氏は「観劇人口の開拓を考えるなら、ある劇団を大阪に呼んで華々しく上演してもそれ以降その劇団の大阪公演がないと意味がない。そうなると大阪の劇団が相応しい」と述べた。

「精華演劇祭スペシャル」は大阪の劇団に取り組んで欲しい…。そう考えるのはすべての選考委員に共通したところだ。「地元としてもやはり大阪の劇団をピックアップしたい」(野杁氏)。「大阪にある劇場の演劇祭の"スペシャル"。全国に胸を張って今大阪にはこの劇団がある!と言えるような演劇祭になればいい」(桝井氏)。精華小劇場は大阪のど真ん中に居て、<拠点劇場>と名乗っている劇場だ。「<拠点劇場>として精華小劇場は、"新しい大阪の演劇"を打ち出していくことが大事なんじゃないか」(福本氏)。


一ヶ月の現実

大阪にこだわるのは切実な経済問題も理由である。スペシャルの一ヶ月という期間通い続けることを考えると、関西であっても他府県の劇団を推薦するのは難しい。非常に細かい話だが、たとえば京都市内から大阪・なんば(=精華小劇場まで)の交通費は結構な額なのだ(注5)。それに「京都の劇団がミナミを稽古場にすると経済的にも体力的にも消耗する。すでに他の文化施設から支援を受けている劇団を、さらに精華小劇場がバックアップすると劇団がむだに疲弊してしまう」(金田氏)。このことから他府県の劇団や、すでにアトリエや稽古場を獲得して拠点を持っている団体は対象から外すようになった。


1団体を選ぼうとしたワケ

候補は計11団体。選出枠は1つ。大阪の劇団に限っても7団体あり、先述の活動拠点のことを踏まえても1団体を選ぶ決め手がない。ここで思わず"泣き"の一言。「どうしても一つに絞らなあかんの?」(野杁氏)。みんなそう思う。1団体を選出する理由について事務局・丸井重樹はこう説明した。「リハーサル時間がたっぷり取れるよう1団体にして一ヶ月間使ってもらいたい。演劇という表現は、上演する空間でのリハーサルが重要で、そこでいかに濃密な時間を過ごすかが作品の出来や質に関わるのではないかと考えている。もちろんこれまでの「精華演劇祭」でもリハーサル時間が取れるよう工夫してきているし、その意味も含めて精華小劇場は貸館を一切しない"主催事業館"として運営してきている。この演劇祭スペシャルは、一ヶ月という時間を使って、より完成度の高い作品を、そしてこの劇場でしかできない表現をのぞみたいと思う」(丸井氏)。本選考会は、最終的には2団体を決めて当初の予定を変えたのだが、これは簡単にくつがえせない現場の言葉だ。精華小劇場は、「劇場」として一つの実験をしようとしている。


精華流・演劇支援法?!

議論を整理するため、丸井氏から「若手の劇団、中堅の劇団という世代の分け方があると思うが、どちらの層を推すか?」という問いが投げられた。小堀氏は、「関西で演劇をすることにおいて、稽古場の問題、予算の問題、劇場の問題、集客の問題は大なり小なりみんな抱えている。劇場が支援するなら若手劇団を、と思うかもしれないが、運営面をみると若手も中堅も同じ条件で演劇をしている」と述べる。そして「世代で選ぶのではなく、この精華小劇場で一ヶ月活動するという条件で選んだ方がいい」と言葉を続けた。

"精華小劇場の一ヶ月"で何ができるだろうか。ここで福本氏が一つの考え方を示した。「演劇祭スペシャルで中堅と呼ばれる世代の劇団を推し、そのことで若い世代の劇団がひっぱられ、演劇界が活性化していくのではないか」(福本氏)。すると太田氏が「関西には優れた作品を創る劇団はあっても、関西の劇団たちを目立ってリードするような集団はない。精華小劇場のバックアップによって、そういう活気が出てくればいい」と語った。そして福本氏は「中堅劇団の背中を押して、"どや!?"と若い世代を刺激する。その意味でも桃園会はどうか」と改めて桃園会を推した。

一方、金田氏は福本氏とは違った視点で<拠点劇場>のアピールを考え、「この劇場の存在を知らしめるためにも若い観客を集めているデス電所が有効」と言う。また、小堀氏は「確かに集団としては役者もそろっているデス電所はおもしろいし、作・演出の竹内佑は、たえず新しい作品を出していくだろう。ただ、棚瀬美幸というキャラクターが拠点としてのこの劇場を盛り上げる可能性を思うと、南船北馬一団ではないか」と述べた。

団体の支援にとどまるのではなく、団体を支援することによって演劇と劇場の活性化をはかる。選考会は、関西の劇団たちを引っ張り、なおかつ<拠点劇場>としての精華小劇場を盛り上げることをねらって、桃園会、南船北馬一団、デス電所の3団体を浮上させていった。
【つづく】

(2006年9月5日/精華小劇場にて収録)
※一部敬称略。
構成・文:奥村明子




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