セイカのタイワ
〜精華演劇祭スペシャル選考会より〜

<選考委員>
太田耕人(演劇評論家)
金田明子(演劇ライター、精華演劇祭企画委員)
小堀 純(編集者、精華演劇祭企画委員・代表)
野杁育郎(いちびり庵、精華校園跡地活性化協議会・事務局長)
深津篤史(桃園会、NPO法人大阪現代舞台芸術協会・理事長)
福本年雄(ウイングフィールド代表)
桝井政則(朝日新聞大阪演劇担当)
<進 行>
丸井重樹(精華小劇場・事務局)

#01 精華小劇場の現在
#02 大阪にある劇場
#03 拠点劇場の集客力
#04 精華の対話

#03 拠点劇場の集客力

この選考会は、来年秋の「精華演劇祭スペシャル」に取り組む団体を、過去2年間の精華演劇祭に参加した劇団・カンパニーから選び出すわけだが、それにはスペシャル期間の盛り上がりだけでなく、それ以前それ以降の精華小劇場の在り方や、この劇場が目論む演劇界の活性化を視野に入れて考える必要がある。<拠点劇場>として始まった精華小劇場は、大阪・ミナミにある文化施設としてその役割を担い、発展しなくてはならない。選考は、7人の選考委員が候補にした11団体から桃園会、南船北馬一団、デス電所の3団体に絞られつつあったが、ここでいったん精華小劇場についての話になった。


劇場よ、"事件"であれ!

「スペシャルの上演条件に"上演日7日間以上"とあるように、地元としてもできるだけ長く公演して欲しい。やっぱり劇場の入り口にお客さんが長い列を作って並んでいる風景が見たい。だから、ロングランに耐える作品を。最近、精華校園跡地活性化協議会で"文化"という言葉を使わず"エンターテイメント"と言うようにしている。エンターテイメントが作られることを、街は期待している」(野杁氏)。劇場が防音壁や暗転によって空間を遮断しても、さえぎることの出来ないこの地の空気がある。演劇がはじまる以前に、すでにここはミナミという街であり、その街の思いがあるのだ。

選考の対象外だが、今年の精華演劇祭に参加したWI'REについて、小堀氏が次のようなことを話した。「演劇祭vol.4も対象だったらWI'REを推薦したかった。代表の酒井宏人君は、たえずいろんな可能性を見せる作家。ある環境が与えられるとその期待に応え、そして意外性を見せて裏切りもする。たとえば、24時間かけて1,000人の観客を呼ぶように企んでもらう。WI'REは、そうした企画を集団としても個人としてもおもしろがってするだろう。すると劇場自体が話題になるし、いい意味でスキャンダルだし、事件にもなる。精華小劇場は、そういった企画性を打ち出して欲しい」。この発言を受けて福本氏が言う。「歴史も話題もあるミナミという街には、掘り起こすことがいっぱいある。こういった街を劇場でアピールしていくなら、小堀氏の言うようなニュースソースでもって、精華小劇場の認識を高めていけばいいんじゃないだろうか。すると街の人へも『わけのわからん人が劇場に来て芝居してるけど、自分らと関係ないわけでもないねんなぁ』と、伝わっていくと思う」(福本氏)。


精華が付ける集客力

劇場は<人>に見られなくてはならないし、見に来る<人>が集まってくる場所だ。金田氏は事務局・丸井重樹へ質問する。「劇場として団体を支援、サポートしたいというのはわかるが、それとは別に現場の思いがあると思う。精華小劇場はどういう観客を集めたいのか? 実際に現場で観客を見ている人の意見が聞きたい」(金田氏)。これについて「どういう観客を獲得したいかということはあまり考えていない。将来的に事業予算が増えて作品を製作するようになれば、その時に観客のことを考えようと思う。このスペシャルに関しては、団体をサポートすることが主軸だと考えている」と丸井氏。すると太田氏が「作品製作するのは未来のことかもしれないが、それにしても今までの新聞社まわりだけでは(注6)、劇場自身が集客力をつけていくには弱い」と指摘した。さらに「劇場の制作としてマーケティングも考えないと」(野杁氏)の注文が入る。

小劇場演劇は利益を追求する行為ではないので、観客を膨大に動員すればいいというわけではない。しかし、精華小劇場が<拠点劇場>と名乗っている以上、他の劇場や文化施設と同じような集客で満足するわけにはいかないだろう。「街や社会で話題になる劇場となるなら、演劇人と劇場だけで事業を展開するだけでは足りない。もちろんいい作品は要る。観客も要る。でも、街の理解、行政の支援も要る。メディアの協力も要る。<人>の力が要るのだ」(小堀氏)。

「情報誌『プレイガイドジャーナル』を作っていた頃は、読者にまず劇場に来て欲しいと思った。音楽、映画、美術、演劇。あらゆる芸術の今一番おもしろいことを発信する情報誌。演劇しか観ていない人が劇場へ行くのではなく、映画も観る、絵も観る、新聞を読む、本も読む、発言もするという好奇心、行動力のある人。"どこかでおもしろいモノを観たい"と意思を持って訪れる人が集まってこそ本当の集客力だ」(小堀氏)。この意見に共感しながらも丸井氏は、「ただ、自分は小劇場演劇の制作をしている人間として、日々漠然と過ごしている人をひっぱってきて、演劇を見せたいと思っている」と述べた。気軽に入ることのできる間口の広さも大切だ。ミナミのど真ん中にある精華小劇場。大衆に向けたツカミを作ってこそ精華らしいのかもしれない…。するとここで金田氏が「そういう意味でも劇場の外から観客を集めているデス電所を推す」と、話を演劇祭スペシャルの選考に戻した。


関西の劇団への期待

「桃園会のおもしろさは、演劇を観る姿勢を持ってから味わえる部分が多い。南船北馬一団もどちらかというとそれに近い。デス電所の劇団員は積極的にお笑いのイベントや映画の現場、さまざまな媒体へ出て行って、そこから劇場へ人を呼んできている」(金田氏)。デス電所の集客力に対して福本氏が言う。「難解な作品を作る場合もあって敷居の高さはあるが、桃園会も非演劇人口に対するアピールはできる。それに、この街の持っている無頼性というか、わい雑な部分とか、あるいは浪速五座と呼ばれた歴史性とか、その根っこの深さという意味では、そういった世界を描くであろう桃園会がいいと思う」(福本氏)。

これらの意見について太田氏は「どんな作家も劇場からロングランや集客を求められたら、それを意識して創作するだろう」と述べ、「南船北馬一団は、客席から見る感じでは、棚瀬自身に演出のコンセプトがあっても、それがうまく俳優とコミュニケーションできていないように思う。一ヶ月精華小劇場で稽古できる演劇祭スペシャルなら、そこから一歩出て、演出家としても集団としても飛躍する機会になるのでは」と話す。また、桝井氏はデス電所について「劇場側から条件や制約をつけないとこれまでのデス電所と同じ劇世界を、ほかの劇場でも創作できる作品になると思う。逆に、この演劇祭スペシャルで劇場らしさや街にこだわった作品を創れたなら、それはデス電所のステップアップになる」と述べた。金田氏は「確かにそういう意味ではデス電所はこれから鍛える劇団」と共感し、若手劇団への支援は、さらにその下の世代への栄養になると語った。「東京では劇場に観客の列ができるのが普通。それと比べると関西は劇場にも劇団にもお客さんがついてきていないと感じる。竹内は今からいろいろなことを吸収する時期で、彼自身そのことをよくわかっている。自分は関西の演劇を客観的にみて、彼らの世代の演劇人が飛躍すれば、さらに若い世代の創り手たちが出てきて、関西の演劇界全体が元気になっていくと思う」(金田氏)。

精華小劇場の在り方に推薦劇団にまつわる情報が絡められ、話はどんどん広がっていった。ここで進行役の丸井氏は議論が出尽くしたことを確認。桃園会、南船北馬一団、デス電所で投票することにした。
【つづく】

(2006年9月5日/精華小劇場にて収録)
※一部敬称略。
構成・文:奥村明子




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